貝泊への移住目的に入居者募集(2002年4月)

いわきの住民団体

茨城県境に接するいわき市田人町の貝泊(かいどまり)地区で、住民団体「貝泊コイコイ倶楽部」(会長、藤枝二三男・貝泊区長)が発足した。貝泊地区住民は昨年、福島県の補助金などを利用して首都圏住民に同地区での体験宿泊を呼びかけたが、応募ゼロで不発に。失敗にめげずに「地元からできることを」と巻き直しに挑み、空家への入居者募集などの新事業に取り組んでいる。

貝泊小学校、中学校

廃校危機に
大橋直久

貝泊地区は約60軒からなるが、市街地から遠く、過疎化が進んでいる。地区唯一の学校である貝泊小・中学校の在学児童・生徒も小学6年3人、中学2年2人、同3年1人だけ。小学校への入学予定の児童はなく、現6年生が中学を卒業する4年後には、学校の存続が危ぶまれている。

耕土の清水

このため、貝泊地区では昨年「最終的な移住を目標に、とにかく良さを知ってもらおう」と首都圏に呼びかけて体験宿泊を計画したが、応募者はなく、空振りに。しかし「廃校の危機を回避しよう」と若手が中心となり、貝泊コイコイ倶楽部を立ち上げた。「まず手近なところから」と、今月には貝泊地区の「力水」として人気がある「耕土の清水」をPRする看板を設置。今後は、いわき市の援助で山桜を植える事業を展開する計画だ。

空家7軒を貸し出し

また、貝泊地区にある空家7軒を貸し出すことにし、借り手を探している。貝泊コイコイ倶楽部事務局の蛭田亘洋さん(42)は「家賃は月額数千円程度で、家の周りは畑などもあり、都会に疲れた人の農業生活に最適」とPRしている。

里親の資格

蛭田さんは「学校の存続を目指して昨年いわき市教委に陳情したが『児童・生徒がいれば存続する』と言われた。里親の資格を持った人も地区にいるので、自然豊かな貝泊にぜひ学齢期の子供たちを迎え入れたい」と呼びかけている。

農産物の直売所(2013年12月)

大学生が農業体験

大橋直久

地元の魅力を発信しようと活動する、いわき市田人町貝泊桐木の「貝泊コイコイ倶楽部〈くらぶ〉(芳賀広海会長=64歳)」では、直売所「名水の里 山ぼうしの家」を運営する。地元の農産物や加工品などを販売し、食事も楽しめるとあって、利用客でにぎわいを見せている。最近は大学生を招いて体験活動を行った。店長の芳賀万寿夫さん(59)は、「今まで以上にお客さんが増えるようメンバーで協力し、地域振興に取り組んでいきたい」と話す。

「貝泊コイコイ倶楽部」は、地域の住民といわき市内外の人たちとの交流事業を通じて地域を活性化しようと、貝泊地区の住民が設立した。農業体験などを通じて、地区の魅力を発信している。

小豆やニンニク、ハクサイを販売

「山ぼうしの家」では、加工場で作られた豆腐や総菜、みそ漬けに加え、メンバーが栽培した小豆やニンニク、ハクサイ、サトイモなどを販売している。

青大豆を使った「あおばた豆腐」

中でも好評なのが青大豆を使った「あおばた豆腐」だ。豆腐作りが専門の緑川晴子さん(62)は、「青大豆は通常の大豆より収穫量が少ない上に、栽培に手間がかかり大変なんです」と打ち明けるが、できた豆腐はほんのり緑がかった色で、「香りと味の良さが自慢」という。

休憩所には薪ストーブ

併設する休憩所には薪〈まき〉ストーブが設置され、週替わりの食事を楽しむこともできる。9月から店長を務め、団体の副会長も兼ねる芳賀さんは、「以前は近くで採れるキノコを目当てに、開店前からお客さんが来るほどだったが、震災後はお客さんが減少しつつある。以前のようにたくさんの人に来てもらえるよう、取り組みを考えている」と話す。

東京の女性学生が豆腐作り

その一環として、大学生の意見を取り入れようと、東京の大学生を招待して店の体験活動を行った。6人の女子学生に豆腐作りを教えるなどし、地域活性化の方策について話し合ったという。

芳賀さんは「これからも遠くから足を運んでもらえるように、地域とお客さんとのつながりを大切にして、店を続けていきたいです」と意欲を見せる。